Jam-Junkies:縄文セッションの旅

やってみた

 俺はギター好きの日本人。本名は伏せたい。シャイなんだ、意外と。

俺はギターが好きなんだけど、プロになるとか明確な目標はないんだ。

ただもっとうまくなりたいんだ。だからとにかくセッションをする。

即興で他者と演奏することで武術の達人みたいに切れ味のいい演奏ができるようになりたいんだ。

同じ志の仲間もいるんだ。

特にバンドというわけでもないが、あちらこちらに行くので、Travelersとしてる。

でも実際は誰もその名前で呼ばないんだ。

何って呼ばれてるかって?

からかい半分なんだけどね。僕らはね。

Jam-Junkies

東大のプレハブ?

 ピンポーン、ピポン、ピポン、ピンポーン。

「あれ?寝てたのか。」

Jammerは腹の上のギターを降ろしながら目をこする。

いつも演奏中にそのまま寝てしまう。

彼は自称Jammer。

JammerはJamをする人という意味で、本人がそう名乗っている。

ドンドン!玄関をたたく音。

こんなことをするのは一人だけだ・・・・

「エド、どうしたの朝から?」

「おいJammer!勘弁してくれよ。お前の朝は11:00なのかい?」

「じゃぁ,こんにちは。それでなに?」

「出かけるぞ!用意しろ。」

彼はセッション仲間のエド。

ベースを担当している。

のそのそとズボンをはき替える。

キャップをかぶる。準備OK。

「おい、早いのはいいが、もう少しおしゃれしないのか?」

「べつにいいよ。で、どこ行くの?」

「東大。」

「は?」

二人は中野から電車に乗り新宿で乗り換える。

「ねぇエド。なんで東大が埼玉にあるのさ?」

エドはにやりとして何も言わない。

戸田公園の駅を降りるとそこは倉庫が立ち並ぶ一角だった。

エドは正面を指さして言う。

「あれだ。」

プ、プレハブ・・・・

エドは立て付けの悪い扉にけりを入れて半ば強引に扉をあける。

「おう!」

声を上げるエド。

なんだ!これ???

Jammerの正面には2001年宇宙の旅さながらの奇妙なマシンがある。

「初めまして佐藤ヒラガと申します。」

突然の声に驚くJammer。

「おう、jammer、博士だ。挨拶しろよ。」

エドに催促されぺこりと頭を下げるjammer。

正直状況がのめない・・・・・。

「これは・・・・?」

「ああ、俗にいうタイムマシンだね。」

あっさり答える佐藤博士。

ドラえもんかよ!と突っ込むわけにもいかない。

というか、エドがいたずらしているのか?

いや、それにしては大掛かりすぎる。

計画性がないのがエドだ。そんなわけない。

面接官 佐藤博士

 少し世間話をしないか?

佐藤博士が切り出す。

Jammerは自分はJamセッションをしながらギター修行していることを話す。

最近セッション相手が枯渇してきていることなど。

博士はエフェクト自作の経験があるようだ。

温和な見た目とは裏腹にかなりのメタルフリークらしい。

今度最高の歪系を作ってくれるそうだ。いいやつじゃん。

「君は歴史についてどう考える?」と佐藤博士。

難しいことはわからないけど、過ちも含めて今があると思う。

Jammerはそう答えた。

「合格だ。」

博士はそういうと明日にでも仲間のTravelersを連れてくるようにといった。

「色々な人とセッションしたいでしょ?君たちはJam-Junkiesだと聞いたよ」

現地集合かよ!

 翌日プレハブに到着すると、すでにTravelersは全員いた。

「おうJammer!おやつは500円以内だぜ!」

エドが言うとメンバーが笑う。

「じゃぁ行こうぜ!縄文に!」

「え?これマジで動くの?」

いやないだろう、それはと心で思いながら、

真顔の佐藤博士がうなずいているので困惑する。

「じゃぁ説明するよ。」

艦内に乗り込むとシートがありベルトを装着した。

「それと、あのドアの向こうの道具は自由に使っていいからね。」

博士がいたずらっ子のような顔をする。

「道具?」

皆怪訝そうな顔をしている。

「僕が外から操作するから」佐藤博士が言う。

「これは音と共感心理の研究でもあるんだよ。世界平和につながる。」

「帰りは?」というJammerの真っ当な質問は機械音で打ち消される。

「あ、それと、歴史が変わるような事件や事象にかかわってはいけないよ。

それが旅のルールだからね。」

キュィーンとうなりを上げるマシン。

「いいデーターを期待している!」

無線から博士の声が聞こえる。

マシンはさらに音量を上げる。もう何の音かはさっぱりわからない。

ゴトッ。軽くマシンが揺れる。

次の瞬間前面の景色が「ムンクの叫び」のようにねじれて視界に飛び込む。

強力なGでシートに押し付けられる。

Jammerは声を出していたと思う。

「うぉー」とか「ひー」とか・・・・

もう目をあけていられない・・・

突然体を押さえているGが抜ける。

ゆっくり目をあける。

そこは原生林。

「ふわぁー」もう意味のある言葉は出てこない。

縄文文明

 マシンのドアをあけて外にでる。

想像していたのとは少し違う。ここは完全な集落である。

きれいな水の流れる川に沿って建てられた竪穴式住居の数々。

中央には少し大きな建物もある。集会所だろうか?

大きな土偶のオブジェもある。

人々の服装は意外にも清潔である。

顔や体には入れ墨?がある。

入れ墨はきれいな発色であり、それは立派なファッションであった。

「それにしても随分こちらを見ているな・・・」

ジェフが言う。

ジェフはキーボード奏者である。

「ああ、眼圧がすごいな・・・」

エドが言う。

いったん中に入ろうと全一致の意見。

どうする?これ?

音でかたろうぜ!

 喧々諤々話をしたが、彼らは攻撃的ではないように見える。

でも言葉は通じそうにないのだ・・・

腕を組んでいたJammerが奥の方を指刺して笑う。

博士が積んでくれた発電機である。

よく見るとドラムセットやアンプまである。

音楽フリークの博士らしい。

「俺らはJam-Junkiesだろ?音で語ろうぜ!」

Jammerの発案に全員がにやりとする。

そうと決まれば機材のセットだ。

「学園祭をおもいだすぜ!」

ドラムスのヘンドリックスが言う。

「学園祭の時はラブレター用の箱もよういしたぜ!」

と、もう一人のギタージョージ。

「ほら、もうやるよ。」

Jammerはタイムマシンハッチをあける。

同時にジェフが電子ピアノを奏でる。

静かなアルペジオ。

ギターを振り上げたJammerがメロディーを奏でる。

「ボヘミアンラプソディー」

フレディ・マーキュリーの美声ラインをJammerのギターがなぞる。

一瞬驚いたような縄文人たちだったが、

綺麗なメロディーラインは理解できるようだ。

女たちは目を閉じて聴いている。

奥の方でも肩を組んで揺れているのが見える。

子供たちは初めて見るエレクトリックギターに興味津々だ。

最後のフレーズを弾き終えて丁寧にボリュームを絞る。

なんと拍手喝采!

拍手するんだ・・・・・縄文人って。

マシンから降りて、人々と握手を交わす。

集会所と思しき場所に引っ張られるJammer With His Travelers。

身振り手振りで音楽について語る縄文人。

興味があるようだ。

その時一人の子供が小さな太鼓をもってJammerの前に現れる。

ぽんぽんと打ち鳴らされる太鼓。

Jammerは言った。

「いいね。Jamる?」

「じゃーっむ、じゃーっむ。」と子供が発音する。

「そう、Jamだ。」

うなずくJam-Junkiesたち。

焚火の前では、もう男たちが太鼓のセットを始めている。

「はは、やる気十分じゃない!」

Jo-Monセッション開始!

Jammerのアームダウンで目の前が真っ暗になるJunkies。

気が付くとそこは大きな公園だった。

犬を散歩させる人や、芝生でゴロゴロするカップル。

何気ない日常。

ポケットに手を入れる。

何かがある?なんだろう?

手のひらにのせた緑色の勾玉をみてJammerはにやりと笑った。

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