前書き
この記事はフラッシュバックに悩む自閉症スペクトラム症(ASD)当事者の書くもので、医学的なものではありません。一応調べたりはしていますが、どちらかというと「感覚」とか「イメージとの違い」などが参考になるかもしれません。
なんせ、本人ですから。
フラッシュバックとは
一般的に「フラッシュバック」というと、映画や歌詞でのイメージが大きいかと思います。
“あなたと~歩いた~あの海辺~がフラッシュバックするの~”
などと歌ったり、
主演の俳優さんが、”カキーン”という効果音とともに「うっっ!」と頭を押さえる。画面には断片的な過去の映像が流れ、いやな記憶で身動きが取れなくなる。
私の感覚では少し違います。
医学的なものではよく「トラウマ」という言葉が使われていますね。
説明すると、ものすごい脅威、脅迫を経験する出来事の体験が「トラウマ」らしいです。
事故、災害、別れ、病気、拷問、虐待、人質、etc…..ですかね。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、トラウマが発生した後に発生する障害だそうです。
脳科学辞典を読んでみますと、「症状は侵入(再体験)、回避、認知と気分の陰性の変化、覚醒度と反応性の著しい変化の4つの症状クラスターに大別される。」とあります。
この中の「侵入(再体験)」がフラシュバックだそうです。悪夢や解離性フラシュバックなども記載があります。
私も悪夢は日常的に見ます。昼間もフラシュバックしますから、24時間脳がフル活動してしまいます。また、フラシュバックは映像イメージもあるので、何が現在なのかわからなくなり、ふわふわと現実感のない解離のような状態にもなります。映像イメージは私の場合、西日のかかったような色合いです。つられて言葉遣いも子供の時のようになったりします。
トラウマについてもふれましょう。
大きな事件が起こり、それに対してすべがない、何もできないと感じてしまうような大ショック、「トラウマ」。
トラウマには段階があるようです。
- 急性トラウマ後遺症(自身の健康や行動にゆがみが生じるが、短期間、最大数週間程度)
- 慢性トラウマ後遺症(ゆがみが1か月以上続く。いわゆるPTSD)
- 複合トラウマ後遺症(複数のトラウマが合わさり、長期間継続。「コンプレックスPTSD」)
私などは複合トラウマになるのでしょう。フラシュバックしたきっかけが、次のフラッシュバックになり、そのフラッシュバックのきっかけが、また次のフラッシュバックになる。
年齢を重ねるほどドンドンきっかけが増えていきます。発達障害の症状であるADHDの多動は、年齢を重ねると落ち着く傾向があると言われますが、ASDのフラッシュバックは年々悪くなる感じがします。
きっかけのことを「トリガー」なんて言いますよね。「トリガー」がどんどん増殖していくんです。
例えば交通事故の記憶が、回りまわって「回転するもの」「丸いもの」を見ただけで、タイヤを連想してパニックになるとかです。
動物のフラッシュバック
このフラシュバックは、人間特有のものかと思えば、動物にもあるそうです。
例をあげれば、「音恐怖症」など、花火や、雷などで犬がビクビクして、音がやんだ後もしばらく震えていたり、ひどいときには嘔吐などもするようです。
これは、以前に恐怖体験があったわけではなく、「先天的な理由でのフラッシュバック」だそうです。
では、小動物が大きな鳥に捕食されそうになった経験から、鳥を見ると体がこわばり巣穴から出られなくなる。
これは「後天的理由のフラシュバック」になるんでしょうね。
動物は本能で「危険に近寄らない」とプログラムされているんですね。
では、フラッシュバックは原始的な脳の反応なのでしょうか?
脳のどの部分で反応しているのでしょうね?
どうやら海馬が関係あるらしい
フラシュバックは恋愛などにもありそうだから、人間特有で大脳がかんけいあるのかな?とか思いませんか?
また、動物にもあるのなら小脳かな?とか勝手に想像します。
ところが、海馬らしいんですね。「海馬はエピソード記憶の形成に不可欠な皮質部位である。」とあります。
なるほど、この「エピソード記憶」が曲者なんですね。
これは以前精神科の先生に言われたことですが、「記憶力のいい人のほうが強いフラッシュバックがある。」とのことです。
ざっと読んだ感じだと、結局全部は解明されていないのかな?といったところです。PTSDの患者の海馬が小さいということに関しては賛否あるようですし、ストレスホルモンとの関係性も研究中とあります。
ASDのフラッシュバック
まずASDとは何ぞや?ですね。発達障害の一つです。
日本語だと、ASD(自閉症スペクトラム)だそうです。
スペクトラムは連続体の意味で、自閉症の連続体?なんですね。
一昔前だと、広汎性発達障害、アスペルガー高機能自閉症などなどいろいろ名称がありました。
私も最初は広汎性発達障害の診断で、現在は自閉症スペクトラムです。
このほかに、発達障害にはADHD(注意欠如多動性障害)や、LD(学習障害)などがあり、この三種類がブレンドして個々の発達障害を形成?しています。
発達障害の概念は能力グラフが平均ではなく、凸凹が激しいだそうです。
PTSDとは少し違う仕組みなのかもしれません
今回は浜松医療大学のPDFを勝手に参考にさせていただきました。
自閉症の中核となる精神病理とあり、「その1」から番号が振られています。
私としてはどれも「うんうん」というところなんですが、フラシュバックに関連するのは、「その4」。そのまま抜粋してみます。
自閉症の中核となる精神病理
その4 タイムスリップ
• タイムスリップ現象:自閉症の記憶の病理
• 過去の事象の現在への侵入、フラッシュバック
・・・後方からの想起というより再体験
• チックとの類縁性・・・汚言症との共通項
• 行為チック・・・自閉症児がある出来事をその
ままそっくり再現してみせる現象
• 一過性憑依
• 現実にトラウマも非常に多い
・まず、タイムスリップ現象とあります。私は兼ねてから自身のことを「時系列の障害」であると説明しています。フラシュバック中の恐怖の怒りや熱量は、まさに嫌なことがあったときそのものですし、現在は現在、過去は過去ではなく、同じような事象であればどちらにも同じ熱量で感情移入します。日常から月日や曜日の感覚は希薄で、恥ずかしながら何日何曜日かわからないことも多いです。
・行為チックとありますね。こういうことでしょうか?私は一人暮らしなんですが、その日に交わした会話を”独り芝居”するんですね。要は相手のセリフも自分で言って、何度も何度も”劇団ひとり”をするんです。もちろん独り言です。これは悪いことだけではなく、楽しかった会話も再現します。
・一過性憑依、これは先ほどPTSDのところで出てきた解離性フラシュバックに近いのですかね。私自身2重人格?と自分を疑ったことがあります。フラシュバックしているときは猛烈に怒っていたりするんですね。普段なら考えられないような乱暴者になることもあります。
ところがそんな時でも、元の意識もあるんですね。なんといいますか、幽体離脱して後ろから冷静に自分を見ている感覚です。「暴れてるなー」みたいな感じです。資料の順が逆になりますが、先ほどの「自閉症の中核となる精神病理・その3」にはこうあります。
自閉症の中核となる精神病理
その3 過敏性を巡る問題
• 知覚過敏性の問題:嫌いな音、嫌いな形、嫌いな
接触、嫌いな臭い・・・扁桃体機能の障害が背景に
• 生理的問題×心理的な問題・・・タイムスリップに
よる修飾が後に生じる
• 過敏性は生まれつきの問題なので指摘されなけれ
ば分からない
• 自閉症の解離:意識を飛ばして適応をはかる
• ファンタジーへの没頭から解離までは一歩
• 他者をそっくり取り込む
• 多重人格例もあるが意識の断裂はない
最後に”多重人格例もあるが意識の断裂はない”とあります。
また、別の資料では、「記憶が途切れている部分を自分で創作して、すっかり思い込んでしまう。」などとも記述がありました。
自分ではうそをついている意識はないです。ただ、他人の記憶と違うことも多々あり、あまりにも昔のことで、どちらが正しいかはわからないことが多いです。
カキーンと効果音はない
フラシュバックするとき何かのきっかけでバチン!と始まるわけではないのです。
最初は自分でもわからないし、周囲もわかりません。何気ない会話で少し嫌な気分がするなとは思うものの、「フーンそうなんだ。」くらいで会話しています。たいていその場では大丈夫です。
ところが家に帰ると怒りが収まらなくなるんです。なんだかわからないけど過去のことを回想してイライラします。
次の日にも同じような会話が続くと、私の言動が乱暴になってきます。ついには色々なところに飛び火して文句が止まらない状態になり、周囲を驚かせてしまいます。
家に帰って少し反省するわけですが、その時初めて「俺フラシュバックしてる?」と気が付きます。
実はこの気が付いた時にはもう遅くて、悪夢の連続で24時間フラシュバックが開始しています。もう止まりません。
効果音があるとすればこの状態で、刺激を与えられたときに一度だけバチンとなって映像イメージが流れ込んできたことがあります。
この時嫌な会話をした人はもちろん次のフラシュバックのトリガーになりますので、好き嫌いではなくなるべく接触しないようにしなければいけません。
正直言って、自分でも何がきっかけでフラシュバックするかわからないので、テレビもあまり見れないですし、プライベートで人とかかわることもできないです。
治療
一般的なPTSDでは「うつ」を併発していることが多いようで、抗うつ剤を使用するという記述を見ました。
私は最近「抗てんかん薬」を使用しています。特別かな?と思いましたが、そのような記述もありました。
しかし、これらは「おちつかせる」効果しかないのですよね。
記憶が消去されたり、思い出さなくなったりするわけではないんです。一番いいのはトラウマになる問題の解決なんでしょう。
ところが、なくなったものは返ってこないし、和解できるならトラウマになりませんよね。
第二候補は「今のほうが昔より幸せになる」です。これも難しいです。特に年齢を重ねると良い変化は少なくなります。
「認知行動療法」がいいとよく言いますね。それで治癒できる人はいいと思います。主治医の話では、私の場合は向かないそうです。余計悪化するからと言われました。
どれくらいの人が、フラシュバックの問題を抱えているかわかりませんが、これと言って対処法が確立してないのが現状です。
今のところ、なるべく刺激やトラウマを避けて生活しています。
また新たな情報を仕入れましたら、加筆したいと思います。
薬について追記
ある方が、フラッシュバックにも薬があるとおっしゃったので、少し調べたところ、
薬ではなく、米ぬかサプリの「フェルラ酸」でした。
こちらは、主に認知症に効果があるといわれています。
「フェルラ酸 認知症」で検索すると見つかります。
一部の精神科の先生は、効果について落ち着きがでると記載していました。
実際に処方しているメンタルクリニックもあるようです。
試せるの?という方もいるかもしれません。
もちろん自閉症の薬ではないですが、私のメンタルクリニックでは、処方することは可能だそうです。
ただし、自費(自立支援医療の対象外)だそうです。
また、今のところ万人に効果があるものでもないそうです。
もし効果があり、楽になるならそれに越したことはないので、情報として書いておきます。
ちなみに私は試していません。
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